遺伝子組換えイネの第一種使用等に関する承認に先立っての意見提出を行いました
遺伝子組換えイネの第一種使用等に関する承認に先立っての意見
2017年3月29日
生活クラブ生活協同組合(千葉) 理事長 木村 庸子
1.交雑性について
・意見内容:野生生物との交雑性だけでなく、栽培種との交雑性についても評価すべきです。
・理由:申請書では、「交雑性に関して影響を受ける可能性のある野生植物は特定されなかった」とされ、実際には他のイネとの交雑性については全く調べられていません。今回承認申請が出されている二品目は、ゲノム編集技術を使ったイネとしては初めての承認申請です。これまで以上に慎重に、他の生物と交雑する可能性について、きちんと調べるべきと考えます。従来の遺伝子組み換えイネについてもそうでしたが、ゲノム編集技術を使ったイネについても、影響を受ける可能性のある野生植物はないと交雑性を否定されるのは、とても問題です。農作物との交雑性についても評価の対象としてください。
また、隔離ほ場周辺1.5Kmの範囲に一般の水田が複数あります。花粉の飛散がないかにつて、実証試験を行なうべきです。
2.オフターゲット作用について
・意見内容:標的以外の場所が切断されていないか、徹底的に検証するべきです。
・理由:申請書ではオフターゲットについて、「オフターゲットの候補として挙げられた配列は存在するものの、それらの配列のうちオフターゲットスコアが1.0を超えるものは、構造遺伝子のアミノ酸配列に影響をおよぼさないインタージェニック領域やイントロン配列上に変異挿入をもたらす領域であることを確認」したと書かれています。標的以外の部分が切断されたとしても、アミノ酸配列に影響がなかったり、イントロン配列上であれば、問題がないと言いきれるのでしょうか。ゲノム編集技術においては、標的以外の部分のDNAが切断されて重要な遺伝子の働きが壊れてしまうと、アレルギー物質がつくられたり、がんが発生するのではという懸念が聞かれます。標的以外のどの部分がどのくらいの確率で切断されるのか、検証が必要です。
3.承認プロセスについて
・意見内容:ゲノム編集を使って作られた生物については、カルタヘナ法にもとづく承認プロセスを今後も必ず課すべきです。
・理由:ゲノム編集技術については、諸外国において、規制のあり方がいまも議論されており、遺伝子組み換え技術と同様の規制は必要ないとする意見も聞かれます。日本政府においては、ゲノム編集を使用した作物の栽培について、今後もカルタヘナ法にもとづく承認プロセスを確実にとっていくべきと考えます。また、他の動植物への影響がこれまで以上に複雑かつ重大となることを鑑み、農作物への影響評価を義務付けるようカルタヘナ法を改正することを求めます。
4.複雑な働きを持つ遺伝子への介入について
・意見内容:予防原則に則って、ゲノム編集イネの栽培を承認すべきでないと考えます。
・理由:遺伝子の働きも細胞の働きも複雑です。従来の遺伝子組み換えとゲノム編集技術を組み合わせて、その複雑な仕組みに介入する以上は、正確な評価が必要です。それにもかかわらず、交雑性、オフターゲット作用についてきちんと検証されていないのは上に書いたとおりで、「競合における優位性」「有害物質の産生性」についても、「影響を受ける可能性のある野生動植物等は特定されない」ときちんと調べられていません。農作物や人への影響も含め、カルタヘナ議定書の考え方にもとづく幅広い評価が行なわれるまでは、予防原則に則って、今回申請されている二品目のシンク能改変イネの栽培は承認すべきでないと考えます。
以上